「ホウ素系防腐防蟻剤」誕生

ホウ素系防腐防蟻剤の歴史は株式会社エコパウダーの創業者である齋藤信夫社長の歴史になぞらえることができます。

ホウ素系防腐防蟻剤が国内で使われるようになる以前、1995年頃には、触れただけで手が赤くただれてしまうような油性の溶剤やクレオソートなどの薬剤が建物の土台などに塗られていました。

こうした薬剤はすでに使用禁止になっていますが、国内ではミツバチの大量死の原因だと疑われているネオニコチノイド系薬剤や胎児の脳に影響があるといわれているピレスロイド系薬剤が一般的に使われています。

それに対し、EUでは2019年12月からネオニコチノイド系薬剤のイミダクドプリド、チアメトキサム、クロチアニジンなどの薬剤が屋外全面使用禁止になるなど、規制強化が進んでおります。

ホウ酸の原料は無機物なので揮発蒸発しません。そのため、人やペットなどが体内に取り込むことはほとんどありません。

万が一、体内に取り込むことがあっても、人やペットなどほ乳類動物は腎臓の働きにによって体外に排出されてしまいます。

そのため、オーストラリアやニュージーランド、アメリカでもホウ酸が住宅の防腐防蟻処理材として昔から使われています。アメリカのハワイ州では住宅のすべての構造材がホウ酸で処理されているほどです。

先進国では、土壌処理やシロアリ駆除には合成殺虫剤が認められていますが、住宅の構造材にはホウ酸が使われているのが世界のスタンダードです。

シロアリの予防に合成殺虫剤が使われる現状を危惧したのが、株式会社エコパウダーの齋藤信夫氏です。

同氏は、クレオソートが土台に塗布されていた1995年頃に手作りのホウ酸水溶液を調合し、当時、経営していた住宅建築会社が建てたモデルハウスの土台などに塗布したそうです。

当時、国内にはホウ素系防腐防蟻剤が売られていなかったため、畑違いの薬剤作りに取り組むことになりました。国内では合成殺虫剤全盛の時代であったため、誰もホウ素系防腐防蟻剤を作ろうという考えが無かったからです。

薬剤の開発は、試行錯誤の繰り返しだったそうです。そこで同氏は、1998年にホウ酸の先進国であるアメリカへホウ酸事情の調査に向かいました。

1998年1月 米国ダラスで聴講中の齋藤信夫氏

アメリカではヘルメットを被った軽装のカーペンター(大工)が噴霧器でホウ酸水溶液を散布していました。ホウ酸をお湯に溶かして、噴霧器などで木材に噴きかける光景を見て、国内では防護服や防毒マスクを身に着けて合成殺虫剤を撒く姿が一般的だっただけにカルチャーショックを受けたそうです。

帰国後、国内で初めてホウ素系防腐防蟻剤の開発に成功。2002年には、エコパウダーBXの特許(優先日2002年6月で特許取得済)を申請、京都大学生存圏研究所(旧 木質科学研究所)など、公的機関での室内試験(2002年合格)、野外試験(2003年試験開始)という実証試験を行ってきました。

すべての木部にホウ酸塩水溶液を噴霧

2003年に無色透明なエコボロンの研究・開発に着手し、2005年に製品化に成功、2007年から建築資材評価センターや京都大学生存圏研究所で室内試験、野外試験を開始しました。

2011年9月に国内で初めて公益社団法人日本木材保存協会の認定を取得(A-5430)、翌年には一般社団法人住宅性能評価・表示協会で長期優良住宅劣化対策等級3に適合、2014年にホウ素系防腐防蟻剤として国内で唯一、エコボロンが一般財団法人日本建築センターの評定を取得し、型式適合認定住宅に使えるようになりました。

2015年にはエコボロンスーパーも公益社団法人木材保存協会の認定を取得しています。

同年に、京都大学生存圏研究所でアメリカカンザイシロアリの室内試験を実施して、有効性が裏付けられました。

エコパウダーの製品群は国内のホウ素系防腐防蟻剤の先駆者(パイオニア)としての技術力と他のホウ素系防腐剤メーカーでは実施していない公的機関による野外試験のデータが十数年間蓄積されており、科学的根拠が信頼と信用を培っていると考えられます。

鹿児島県日置市吹上砂丘の野外試験場(京都大学生存圏研究所)

アメリカでも住宅がシロアリの食害を受けた時には合成殺虫剤を駆除剤として使い、シロアリが屋内に侵入するのを阻止するために合成殺虫剤を土壌処理剤として使っています。

しかし、人やペットが生活をする住宅内に限っては合成殺虫剤は使いません。

その理由は、シロアリによる食害が起きておらず、木材腐朽菌による腐れも出ていない状況で合成殺虫剤を使う必要がないからです。アメリカでは、人やペットに害のないホウ酸で住宅全体を守ろうという思想が広がっている現れでしょう。